2021年8月頃の打ち合わせで、Maruから通達があった。
「代官山店のインスタアカウント、フォロワーを10,000にしよう」
いやいや…それ尋常じゃなく大変ですよ?
言うのは簡単だ。当時の時点でのフォロワー数は、実に1,000フォロワー弱。
万アカなんて、本当に実現できるものなのか。TUMUGUチーム全員の頭に不安がよぎった。
実際に、代官山店のHPBページもインスタも、コンノとMaruがコツコツと更新を続けていたのは確かだった。
前年2020年末にHPBと別途で完成させておいたTUMUGUホームページと合わせて、かねてから、コストを掛けずに自社のSNS媒体を強化していくのが目標だったから。
ここから改めて、インスタのほうを本格始動していく。
しばらくの間、①HPB研究+②インスタ投稿をTUMUGU広告の2本柱としていく方向性が定まった形だ。
一部のお客様は、TUMUGUホームページとHPBサイトをWeb上で調べ、熟読したうえで、さらにインスタアカウントも見てから、ご来店してくれている。
これはご来店いただいた新規のお客様に実際に聞いて確かめたため、紛れもない事実だ。
もちろんパッと探してパッと決めるタイプの方も多いのだが、お客様目線に立ってみれば、そのくらい慎重になってお店を吟味するほうが普通ではないだろうか。
毎月美容に掛けられる資金は限られている。その資金をこの店につぎ込んで良いものか?「うん、このお店ならお願いできる」と思えるか?自分のニーズをきちんと満たしてくれるか?
言うまでもないが、新たなヘアサロンに来るというのは、それまで通っていたお店から乗り換えて来るということ。そこには相応の勇気と覚悟が伴う。
そういう心情を受け止めるつもりで、ヘアサロン側としてもしっかりと情報を整え、発信する必要がある。
自分の店舗が何を大切にしているのか?見に来たお客様が求める施術を、きちんと提供できるヘアサロンなのか?
お客様からの認識とお店側の認識にズレがあるうちは、ご来店につながりにくいし、ご来店いただけたとしても満足度が高まりにくい。
ていねいに、分かりやすくお伝えしなければいけない。大切な人に贈り物をするように、相手の求めているものを、気持ちを込めてお渡しするつもりで。
マーケティング畑の人に言わせれば基本中の基本なのかもしれない。でも、現実にはこれが本当に難しい。
HPBサイト運用のほうで少しずつその改善の糸口が見えてきたところで、次はインスタ運用も同時に走らせていく、という算段だった。
目標は、毎日1投稿。そして必ず、画像10枚分のカルーセルをすべて使い切ること。各投稿ごとに決めたテーマに沿って、伝えるべき情報を過不足なく伝える。
決意するだけなら誰でもできる。まずは毎日やる。やってから対策する。やりながら、思考と改善を重ねる。
一般にPDCAサイクルと言われるやつ。個人的には、聞くたびに耳にフタをしたくなるワード、堂々の第1位にランクインしている。
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2021年の9月~10月。
気付けば、2020年1月の出店から1年と10か月が経っていた。
お客様がどんどん増えて人気店になっていく田園調布店を横目に、代官山店のMaruとコンノは、あまりにも芽が出ない現状に辟易していた。
「こんなに努力してるのに、全然見つけてもらえないんですよ(泣)(笑)」
来る日も来る日も閑古鳥が鳴くばかりで、その空回りっぷりをもはや自虐ネタにして、チームメンバーや長年の顧客様と笑い飛ばしている始末。
「代官山は厳しいですよね」
「いやいや、このエリアはね~難しいよ」
「激戦区だからしょうがないよね」
周りの人々から同情される。半ばあきらめの境地に至っていた。
それでも、続けることは止めなかった。
結果が出ようが出まいが、悔しかろうが、やるべきことは淡々とやり続ける。きっと状況が変わるときが来る、まだやれる。Maruはそう言い続けていた。
そして、本当にその時が来る。
TUMUGU代官山の数字が、やっと動き始めた。
目に見えて、新規のお客様のご来店が増え始めた。
HPBサイトとインスタの改善を並行して続けるなかで、とくに 「脱白髪染め」のトレンドワードがTUMUGU代官山にフィット。
自社ホームページに加え、HPBサイトとインスタ。3つの媒体すべてにおいて、「エクステと白髪ぼかし」2本立てにしていく方向性が、ここで定まった。
「大人女性向けのヘアサロンです」という発信メッセージ、実際に提供する施術・サービスの内容、そしてお客様の受け取るイメージ。
これらすべてに、揺るぎない一貫性が生まれた。要は、お客様にとって「分かりやすい」サロンになったということ。
Maruとコンノのなかに、バラけていた歯車がやっと嚙み合ったような感覚があった。その頃を振り返って、コンノはこう語っている。
「美容師なら誰もがやってる、おそらく当たり前のことかもしれないですけど、新たにご来店いただけるお客様が少ない時期も、しっかりとお客様に向き合って、お悩みを解消できるようにずっと努めてました。これだけは自信を持って言えますね」
それ以前から、施術に満足いただけていたことは、数値にも現れていた。事実、HPB掲載をスタートして以来ずっと、再来店のお客様の割合は8割を超え続けていた。
そこに、発信内容の一貫性が乗っかった。
何かが噛み合う瞬間。
誰も占い師じゃない。その瞬間がいつ来るかなんて誰にも分からないし、そんなものは来ない可能性もある。
がむしゃらにただ漫然とやり続けただけではなく、軌道修正を欠かさずにやり続けた。運よく、それが結果につながった。
2021年の年末、サロンボード上の各月の成績を見ていたHPBの担当さんから、ついに朗報が入る。
「HPBアワードのシルバープライズ受賞が見えてます!」
年が明けた2022年の年始に、前年1年間の営業成績累計が算出され、シルバープライズを受賞。TUMUGU代官山のオープンから2年が経ったタイミングだった。
そして、Maruは間髪入れずに決意を固める。
「こうなったら、次はゴールド受賞を目指すしかないね」
戦いは終わらなかった。
今度は、さらなる高みとなる「HPBゴールドプライズ受賞」+「インスタ10,000フォロワー」を実現するための、血のにじむような1年間が、そこからまた始まった。
インスタでは、コンノの釣り日記や愛猫のこと、Maruの飼っている3匹のワンコのことなど、プライベートなところもオープンにしながら、フォロワーさん一人ひとりと向き合い、工夫を凝らした。
さらに。
HPBページ中のブログが、SEO運用の観点でGoogleと相性が良いことを知ったMaruは、HPBページのほうも、ブログUPとスタイルUPを毎日10投稿、必ずやると決めて継続をスタート。
これによって、HPBシステムからのTUMUGU代官山ページへの評価が上がるのと合わせて、同時にGoogleのシステム上の評価も良くなっていった。
つまり、お客様がWeb検索をかけた際に、上位に表示される可能性がさらに高まったのだった。
努力の結果、2022年12月。
TUMUGU代官山インスタアカウントのフォロワー数が、目標として掲げてきた10,000名についに到達。
有言実行。
文章にすると数行で終わってしまうが、途方もない修羅の道だった。とくに10,000フォロワーが近づいた頃などは、Maruもほぼノイローゼになりかかり、あやうく人間を辞めそうになっていた。笑
インスタとHPBを通じ、TUMUGUのコンセプトが正確に伝わったことで、新規のお客様のご来店が徐々に増えた。
また、TUMUGUのコンセプトを求めている方々にご来店をいただけたため、一人ひとりのお客様に高い満足度の施術を提供することができたのも大きい。
2023年の年始、晴れてTUMUGU代官山は、HPBアワードのゴールドプライズの栄誉にあずかり、「関東エリアの1~2席サロン・第1位」の称号を得ることとなった。
まだまだ発展途上のTUMUGUを支えてくださっている多くのお客様に、心より感謝しております。これからもご指導・ご愛顧のほど、宜しくお願い致します。
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日本有数のサロンとしての、HPBアワード受賞。
こればかりは、サロンワークの現場に立っていないマネージャーの私としては、正直なところ、すぐには実感が湧かなかった。
「できると思えばできる。できないと思えばできない。これは、ゆるぎない絶対的な法則である。」とはピカソの言葉だ。
まさに本当に到達してしまうとは、初期には想像もしていなかった。努力と執念が結実する瞬間を見た思いだった。
店舗の「て」の字も何も無いところから、ヘアサロン出店を実現し、今に至るまでの経緯を目の当たりにできたことは、これまでの人生で最も大きな学びになった。
2024年2月現在。
ブログでこれまでを思い返してきて、なんというか最初からココまで、MaruをはじめとするTUMUGUメンバーは、どこを切り取っても泥臭いことばかりやっている。気がする。
スタイリスト見習いとしての下積みを経て、独立後も試行錯誤の連続、エクステ開発でのたうち回り、出店したらコロナ禍に遭い、HPBを始めて工夫を凝らし、インスタも毎日更新。
これをやると宣言して、積み上げる。お客様目線を突き詰めながら、やり方を変えていく。ひとつ叶ったら、次の目標を宣言し、また目指していく。
何かを叶えるには、目指し続ける必要がある。そしてそれが叶うまでには、途方もない時間と労力が掛かる。
そんな世の中のどの自己啓発書を読んでも当たり前のように書いてあるようなことを、身をもって思い知り続けている。
人と人の関係を紡いでいくTUMUGU。2024年に入り、今もなお新たなチャレンジを続けています。
また、こうしたチャレンジに共感し、進む道を共にしてくれる美容師様・サロン様と今後どんどんつながっていきたいと考えています。インスタDMでも構いません、いつでも遠慮なくご連絡ください。
引き続き、ひとつひとつこちらのブログに進捗を綴っていきます。
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TUMUGUグループをまとめるMaruとの出会いは、私にとってはかけがえのない転機だった。
ある日、気になって聞いてみたことがある。
大手サロンでNo.2を務めていたことは聞いた。それよりも、もっと前のこと。
Maruが、どんな幼少期を過ごし、どんな道をたどって美容師になったのか。
一見すると破天荒なキャラクターのなかに、頑固一徹につらぬく信念や、かと思えばリスクを回避し保険を掛けておく繊細さも備えている。
そのルーツはどこにあるのか?
聞くと、開口一番、驚くような言葉がMaruから飛び出してきた。
「実は17歳の頃に、公園で寝泊まりした経験があってね」