「かっこよくします」— 美容師Maru ①

宣言。
そういう類のものは、最終的にはほとんどが達成されなかったり、守られなかったりする。

守る気があっても無くても口から出てくるような、小さな約束。あるいは結婚式での誓約や、政治家の公約などの大きなものまで。いろんな事情で貫き通せなくなる。子供から大人まで、そういうことはまぁよくある。

宣言すると、相手に期待させてしまう。

相手の期待を裏切るリスクが生まれる。

だから、宣言には勇気が要る。

始めに少しだけ、Maruとマネージャー(私)の出会いについて書かせてください。


+++


暑くも寒くもない、10月の晴れた日。付き合いの長い友人から紹介してもらい、表参道にある気鋭の大手ヘアサロンへ向かった。

ずっとヘアカットをお願いしていた美容師さんが遠くへ引っ越してしまい困っていたら、「カットの上手な美容師さんがいる」と言って教えてくれたのだ。

ヘアスタイルや容姿に特段お金は掛けてこなかった。表参道という土地とも、ほとんど関わりのない人生。片手で数えられる程度の回数しか、行ったこともない。紹介が無ければ歩くことすら無かったであろう、表参道の裏路地エリアのど真ん中に、そのサロンはあるという。

せっかくだしお願いしてみるか、くらいの軽い気持ちで行ってみることを決めたのだが、まさかこの一歩で人生が変わるとは、そのときは思ってもいなかった。



「芸能人も通うような人気の美容師さんで…」「…長いこと通ってて信頼できる人で」「カットが長持ちするから」そう言って熱を込めて話す友達の表情やら、少し高いなと感じたヘアカットの料金やらを思い出しながら、美しく整ったおしゃれなショップやカフェの立ち並ぶ、歩き慣れない表参道の裏路地を歩いていくと、そのサロンにたどり着いた。

暑くはないはずなのに、緊張からか、少し汗をかいていた。

三角形を不規則につなぎあわせた多面体(氷結ストロング缶の表面みたいな)が壁一面にデザインされた、メタリックでスタイリッシュな印象のエントランス。入口イケイケ過ぎわろた。その無数の三角形が、一歩進むごとに太陽光を反射させてくる。めちゃめちゃまぶしい。弱気になっているせいか、その三角形がやけに鋭く見えて、カドに刺さって流血しそうな気分。ひぃぃ。

美容の「び」も知らない当時の自分には、大人気サロンのトップスタイリストにカットしてもらうぜ!みたいな感動や憧れを通り越して恐怖しかなかった。帰りたい。



入口でまごついててもしょうがないので、意を決して足を踏み入れる。「ご予約の方ですね、お荷物はロッカーに入れてください」ヘアサロンにロッカーですか?前まで通ってた地元の小さい美容室では、お預かりしますって優しく言ってくれたよ。何なの、デカサロン慣れない。いやもう怖いよ。何もかもが。

大げさだと思われるかもしれないが、ファッションにゆかりのない男子がイケサロンに行くというのは、なかなかに腰が引けるものなんです、ホントに。



やっと待合席にたどり着いた。長い道のりだった。ふぅ。ひと息ついて携帯電話の画面を眺める。ソワソワし過ぎて、見ている画面の情報が何も入ってこない。

しばらく待っていると、ついに「美容師さん」と呼ばれる方々のなかでもいちばん「美容師さんらしい」出で立ちの方が奥から出てくる。背格好はそれほど変わらないのに、さすがに存在感が普通じゃない。

この人がMaruか。

そもそも見た目がまずカタギに見えないんですが?必死に虚勢を張り、慣れてます感を出す。カウンセリング席に着いて、ひと通りの話を終えた。ではセット面へご移動を、というタイミングだった。

同フロアのスタイリストさん全員に聞こえたんじゃないかという、必要以上にハッキリとした通る声で、僕の目をまっすぐ見ながら、鏡越しの美容師Maruがにっこり言い放った。

「かっこよくします」

えっ(心の声)?びっくりし過ぎて一瞬聞こえなかった。思わず二度見する。キャッチャーミットを前に構えているのに、真横からボールが飛んできて頭に直撃したような衝撃だった。



8年も前のことなのに、美容師さんの言葉としてはごく普通な、この1フレーズとその一瞬の風景が、なぜか今もずっと頭に残っている。

中の上くらいの大学を出た。何度か転職もして、キャリアアップもしてきた。社会人として経験と呼べるものが少しは積みあがって、ある程度は、自分の仕事や生き方に自信や誇りも持ち始めていたと思う。なのに、そういった「普通」や「常識」、「価値観」をかるく吹っ飛ばしてくる。それが、当時の僕にとってのMaruだった。

この目の前の人は、自分の知らない世界をはるかに知っていて、自分が得てこなかった様々なものを得てきたのではないか?これほど確信をもって宣言できる、その根底に何があるのか?もしかしたら、この人から学び取るべきことが、自分には数多くあるのではないか?それを学ぶことが、自分の地平線を広げてくれる予感がした。



何より、このヘアサロンに何をしに来たのか、その一言が思い出させてくれた。「そうか。この美容師さんにカットしてもらったら、かっこよく仕上がるのか」シンプルに、たった一言で、有無を言わさずそう期待させるパンチ力があった。そして、

「言ったことは実現させます」

有言実行。そういった、仕事に対しての誇りや気概まで感じさせる宣言。表参道駅からずっと感じていた怯えは、気付かないうちに高揚感に変わっていた。

その後、偶然に偶然が重なる形で、Maruの進む道を共にしていくことになる。


この記事カテゴリーでは、マネージャーのJUNが「大人女性向け完全個室ヘアサロン」TUMUGUが今ある形になるまでの経緯や、それぞれのメンバーのこと、今取り組んでいること、さらにはこれからに向けての展望まで、ひとつひとつ、さまざまな角度から切り取っていきます。気楽に読んでもらえたらと思います。

TUMUGUは現在、考え方やコンセプトを共有できるサロン様・美容師様との輪を広げています。横のつながりをもって情報共有をしていくことが、美容師様やそのお客様にとって間違いなくプラスになる、と確信しているからです。インスタDMやお電話、いつでも大歓迎です。

ボリュームアップエクステの施術例をインスタグラムにアップしています。
代官山本店インスタグラム


TUMUGU代官山本店ご予約はこちらから
TUMUGU代官山本店のご予約


完全個室or女性スタイリストご希望の方はこちらから
TUMUGU代官山のご予約

当サイトをご覧の美容師様へ


美容師様向けのエクステ詳細は、こちらのインスタグラムアカウントよりご確認ください。
美容師様・業者様向けインスタグラム


エクステのご購入はこちらから。
エクステ販売サイト

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (1件)

  • […] そして、面接に臨んだ当日。だだっ広い面接室に案内され入室。集団面接の形式で、横並びの5~6名の志願者と、同じく5~6名のコワモテのサロン幹部が向かい合う。ハイブランドで身を固めた、社内でも売り上げ上位のベテラン美容師陣。異様な重圧を発している。「1人もカタギに見えないんですけど」面接官が並ぶ長いデスクの中央には、当時の社長とNo.2のMaruが陣取っていた。さらに、その面接官たちの背後に、現役美容師陣が何十人も一列に整列して、こっちを眺めている。あえて、プレッシャーにプレッシャーを覆いかぶせてくるスタイル。これに打ち克った学生だけが、入社の切符をつかめるというわけだ。コンノは、屈しなかった。試験が終わると、合格者にはその場で各幹部から内定通知を受け取り、それぞれの幹部の店舗への配属が通達された。「君、ウチにおいでよ。合格ね」+++2004年4月。その大手サロンは多くの系列店を抱えていたが、そのなかでも花形であった表参道店に、コンノはいた。地元・宮城から上京し、高田馬場を経て、ついに日本の美容の中心地、表参道へ。ここから始まる新しい毎日への期待で、これまでに無いくらい気持ちは高ぶっていた。「よし、やってやる」しかしこれが、コンノにとっての大きな試練の始まりだった。 […]

目次