「代官山店でも導入してみましょうか、HPB」
2020年6月の宣言解除以降、TUMUGUではMaru、コンノ、KiRiKo、経理担当のMaruの奥様に、私JUN(マネージャー)が加わって、計5人での打ち合わせを毎週行なっていた。
田園調布+代官山の2店舗をほぼ同時にオープンして半年。このタイミングで、チーム全体の知恵と馬力を総動員したかったのだ。
メインテーマとなっていた2店舗の新規のお客様集客に加え、持続化給付金についての議論や、TUMUGUホームページのリニューアル、さらにボリュームアップエクステの一層のグレードアップを図っていくことができないか(今思えば、ぜんぶ同時に攻めなくても良かった気もする)。
山積みの検討事項について、同じ美容師といえどバックグラウンドも性格も異なる3人+美容師経験は無くとも他業種で働いてきた2人が一緒になって、全員で頭をひねって策を練る。
金銭面の舵取りに関しては、これまでと同様にMaruが握っていた部分が大きかったが、コロナという誰も経験したことの無い、答えもどこにも無い未曽有の事態の真っ只中。
これを乗り切っていくためにも、Maruの独断専行ではなく、なるべく多くの視点からの意見を混ぜ合わせて考える必要があった。
そして、コロナ第2波(8月頃)・第3波(11月頃)の影響もあり、街の動きは依然として落ち着いていた秋口の頃。
全員マスク姿+消毒必須で長いこと泥臭く議論を重ねてきた甲斐あってか、HPBを導入した田園調布店に勢いがついてきた。
前記事の通り、導入に踏み切った要因のひとつは、HPBの月額費用が想定を大きく下回っていたことだった。
また、導入をきっかけに新規のお客様が殺到したのは、KiRiKoが粘り強く続けてきたビラ配りや店舗づくりの地道な努力に加え、「完全個室サロン」の競合が他にいなかったという外的要因の助けもあった。
では、同じように代官山店でHPBを導入しても、同様の結果が期待できるか?
田園調布と代官山。どちらも高級住宅地エリアであることは間違いないが、街としての性質は大きく異なっていた。
まずシンプルに大きく違ったのが、美容室の件数。この点は、ある程度イメージ通りではあったが、HPBサイト内でワード検索をかけると、「田園調布」で 約200件 に対して「代官山」はなんと 1,000件近かった。(ちなみに、興味本位で「渋谷」も調べたら約 2,000件だった。怖っ。)
代官山と聞くと、都心に近い割に町としての面積はなんとなく小さい印象だったのだが、とんでもない、フタを開けてみれば大手ヘアサロンの系列店を始め、10席以上の大型サロンも多数あり、その上で中型~小型サロンまでまんべんなく存在していて、攻略難易度のきわめて高いエリアだということが分かった。
とはいえ、エリアの傾向としては、敷地面積の小さな物件が多いからか、ベテラン美容師が小規模あるいは個室の美容室を出店しているケースは少なくないようだ。
そうしたお店は、TUMUGU田園調布のように近隣のお客様に来ていただくことを目指すというよりも、多く抱えている独立前のお客様に、出店後も継続して来店いただく場合が多い。TUMUGU代官山も例に漏れず、顧客様に支えてもらって存続してきた。
ただ、出店前にイメージしていた以上に、新規のお客様のご来店数はあまりにも伸びなかった。
そもそもHPB掲載の有無にかかわらず、生半可なことでは新規のお客様にはご来店いただけるものではない。
ご来店どころか、代官山を始めとした渋谷・表参道・銀座など美容室の乱立するエリアでは、そもそも自らのヘアサロンの存在を見つけてもらわなければ、話にならないのだ。
どうしていけば良いのか。地域やサロン規模によってその答えが千差万別なのは言うまでもないが、おそらくほとんどのヘアサロンがこの点に頭を悩ませているに違いない。
周知の通り、HPBにはサイト掲載時のメリットの大きさに応じて、月額費用の松竹梅プランがたくさん用意されている。上位プランに加入している美容室・ヘアサロンほど、検索上位の目立つ位置に表示されやすくなる。
ならば最上位プランで、と羽振りよくいきたいところではあったが、費用を見て目ん玉が飛び出た。とんでもない金額。自費開業1年目の小規模サロンにとてもそんな予算は無い。
代官山エリアがヘアサロン激戦区であることも、月額費用を押し上げていた。事実、田園調布店と同じランクのプランであっても、田園調布エリアの2倍以上の月額費用が掛かった。費用はエリアに応じて異なる聞いてはいたが、うーん、これほどとは。
やっぱりお金がモノを言うか…
と思いきや、それだけではなかった。
自店のHPBサイトを積極的に運用し、日々更新を続けていると、システム上で「運用に前向きな、活発なサロン」として認識され、それによって検索上位にあがることがあるという。
「それならチャンスはあるかもしれない」
まごまごして現状維持を保っていても仕方がない。
バッターボックスに立たなければ、ヒットもホームランもあり得ない。立ったうえで三振だったとしても、無駄ではない。その次には、その三振の経験を糧として、また立つことができる。
やり方を変えて何度も、何度も、これでもかとやっていく。
これまでだってそうしてきた。
検討の末、2021年4月。
髪に悩む、TUMUGUの施術を求めるお客様にTUMUGUを見つけてもらうべく、HPB掲載開始を決定。まずは様子を見るためにも、出費を抑え低予算プランでのスタートだった。
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5月…6月…7月…
月日が過ぎていくなか、新規のお客様のご予約数に目立った動きは無かった。毎月、田園調布店の2倍の金額を払ってるのに…
HPBの営業担当さんも、出店前からずっと「代官山は本当に集客の難しいエリアですよ」と警告してくれていた。月を追うごとに、それをまざまざと痛感させられていた。
最初から分かっていたつもりだったが、ここまでとは。さすがは強豪サロンひしめく代官山、一筋縄でいくわけがない。
「とはいえ田園調布店だって、HPBを始めて軌道に乗るまでに半年近くかかっているのだ。そんなすぐに結果が出るわけがない。大丈夫」
TUMUGU代官山の出店から1年半。幸いにも、グループ全体の採算は取れている。だが、今のままのペースで、この先ずっと何十年もやっていけるのだろうか?その不安が完全に消えることは無い。
Maruもコンノも、気持ちに折り合いをつけながら、一人一人のお客様にしっかりと技術を提供していた。
そして、日々打ち合わせが続くなか、思い立って一念発起する。
「もっともっと、HPBを変えていけるんじゃないか」
カットやエクステといった技術だけにとどまらず、この際、HPBのサイト作りにおいても、とことんまでお客様目線になって、どこよりも研究して、どうにかして差をつけていけないだろうか?
この頃からだった。
Maruは「お客様がどうやって美容室を探すか」に全力で意識を注ぎながら、「HPB情報の毎日更新」を徹底し始めた。
クーポン改善だけではない。サロントップのキャッチ・コピーの都度改善、TOP写真の入れ替えを行なう。「サロンからの一言」欄でも、伝えたいメッセージをしっかりと伝えきる。
お客様が検索をかけるワードをきちんと使わなければ、意味がない。とはいえ、他サロンが使っているワードだけ使っていても、粒揃いの競合サロンに埋もれてしまう。
このワードで本当に良いのか?1文字すら無駄にせず、使用可能な文字数の上限いっぱいまで、吟味する必要がある。
どの画像がスマホのどの位置に、どんな順番で表示されるのかを把握し、スタイル投稿・整理やキャプション変更まで綿密に、丁寧に行なっていく。
「何が強みなのか」「何が他店と違うのか」「どんなスタイルが叶うのか」を徹底的に掘り下げ、とがらせていく。
自店のHPBサイトに来たお客様の反応は、PVで確認できる。翌日、また翌日と、数字と格闘しながら、不要と判断した部分は即変更。
怒濤のような勢いで、変更に変更を重ねていく。
営業担当さんにも「いや、今のままもうしばらく様子を見ましょう」と言われることは多々あった。変えずに待つ、その大切さもMaruは重々分かっている。
しかし、自分の求める結果に向けて数字が変わってこないのなら、行動を変えろということ。待たずに変えていく、それも等しく必要だった。
TUMUGUのこれまでの取り組みを評価いただき、昨年2023年の9月25日、ホットペッパービューティアカデミー様にWEBセミナーの講師としてお招きいただきました。セミナー内容が編集された動画がこちらです↓
『HOT PEPPER Beauty効果UPテク!』
ぜひご視聴ください。
多くの人が辟易し挫折してしまうような、あまりにも地味で地道な作業を淡々と実行する。容姿の派手さから想像もつかないマメっぷり。
HPBの営業担当さんから「やった方が良い」と言ってもらったり、人からアドバイスをもらったら、自ら調べて裏づけを取りにいく。そして自分のなかで確信が持てたこと、納得できたことは、100%やり抜く。
その泥臭さは、Maruの英語学習、不動産投資、店舗経営、そしてHPB運用のいずれにおいても、一貫して変わらない。
「うまくいきたいのなら、うまくいくためにできることを本当にひとつ残らずやっているか?」
そうやって常に自分に問い続けているようにも見え、ときどきその激しさには畏怖すらおぼえる。
HPB研究の過程で、Maruが確信を得たことがもう一つあった。
「そろそろインスタに本気で取り組んでいかないと」
そこで、2021年8月の打ち合わせで、HPBと並行してインスタ運用も本格始動させていこう、ということになった。
もともと数字を好むMaruは、何事も数字で目標を決めて動かしていく。数字を決めれば、その数字に届いたのか届かなかったのか、常に明確に結果が表れてくる。
そして、筋トレであれ何であれ、決めた数字は何が何でも達成するのがMaruという人間だった。
とはいえ、ことインスタ運用に関してMaruの設定した目標に、またしてもTUMUGUチーム一同、開いた口が塞がらなかった。
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